センサインテグレーションとボディエリアネットワーク のバックアップ差分(No.9)


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 今年からセンサ関係のテーマにも力を入れていますが、センサと集積回路の開発がどう関係するの?という人も多いと思うので、少し解説しておきます。
 
 センサというのは、各種システムの入力部分に当たりますが、一般的には、ディスクリート・デバイスとして認識されており、電子デバイス分野で研究されているものだと考えられがちです。最近では、PCやインタネットに接続された多数のセンサから有用な情報を生み出す技術が情報技術の重要な研究分野となっていますが、これもセンサ自体はどこかから買ってくるものだと考えている人が多いでしょう。では、なぜシステム設計を目標とする集積回路工学でセンサの開発を重要視するのでしょうか?
 センサというと、物理や化学的量を電気信号に変換するものだと考えている人が多いと思います。しかし、人間の五感または第六感などの感覚は、単に物理的な刺激に対する反応ではなく、高次の情報処理メカニズムによって生成されるものなので、システムのネットワーク化や情報の抽象化が本質的に重要です。
 
 人間よりも大きな空間スケールや地球規模の空間スケールで、従来は取得できなかった情報を抽出する研究も重要ですが、人間よりも小さなスケール、例えば細胞のスケールで情報を取得するために、新しいセンサを開発する必要性がより高まっています。また、センサネットワークに使用されるセンサでは、有限のネットワーク資源を消費せずに、より高位の情報を生み出すために、従来のように単なる電気信号への変換デバイスではなく、人間が行う情報処理に近い、より抽象度の高い情報抽出機能と応答速度が要求されています。特に集積回路技術を用いたセンサは、スケーリングとともに空間的、時間的に扱える領域が拡大し続けているため、従来のセンサでは実現できない機能や精度をいとも簡単に実現できる可能性を持っています。また、携帯電話だけではなく、計測システムも1チップ化が進んでおり、従来、何千万円もした装置が数万円で作れるという時代が来ており、ビジネスチャンスも大きく広がっています。さらに、センシングのためのプローブをチップに集積化する技術を開発すれば、計測システムごとセンサ化することができるのです。10年ほど前にインテリジェントセンサと呼ばれ、センサの中に情報処理機能を組み込む研究は盛んに行われたことがあります。今度は、小型高性能化されたセンサを、アイデア次第でシリコン集積回路の中に組み込んで新しい機能を生み出すとことができる時代が到来しています。現在、センサインテグレーションはシステム設計技術の最も刺激的な研究分野であると言えます。これを、Sensing System on Chip (SSoC)と呼ぶことにしましょう。
 もう一つのセンサ研究の流れは、人間が知覚できない巨大または微小、超低速まはた超高速、微量なものや電磁波などを高精度信号処理技術により抽出しようという方向にあります。例えば細胞や分子のスケールで情報を取得するために、新しいセンサを開発する必要性がより高まっています。
 
 具体的に、SSoCの主なメリットは下記のようなものが考えられます。
 特に集積回路技術を用いることにより、画像取得、高精度信号処理や統計処理、学習などを高速に行うことが可能となり、人間が認識できないような、微小な温度変化や、微量化学物質、高速運動などを検出することで、環境、食品の安全性、健康の維持、医療、介護などに応用しようという動きが高まっており、この1年で集積回路技術はこれまでにない新しい局面を迎えようとしています。アイデア次第でシリコン集積回路の中にセンサを組み込んで新しい機能を生み出すとことができる時代が到来しています。現在、センサインテグレーションはシステム設計技術の最も刺激的な研究分野であると言えます。
 
 ・2Dアレイ化による画像処理(ディスクリートデバイスでは配線数に限界がある)
 
 ・高周波の利用(ディスクリートデバイスでは100MHz以上の高周波は扱えない)
 
 ・計測回路の組み込みによる高精度化
 
 ・微小化による極微量測定
 
 ・高価な計測装置の低コスト化やディスポーザル化
 
 ・大型計測器の小型化およびフィールド利用