MeRLの研究方法 のバックアップ(No.12)


研究プロジェクト

研究テーマの選定

研究室への配属が決まったら、研究テーマの選定または提案と研究計画の作成をしてもらいます。学部4年生でも、新規に研究テーマを提案できる実力のある人は、どんどん提案して下さい。とくにやりたい具体的な研究テーマを持って、研究室に来たのでなければ、最初のうちは先輩や教員の研究を見聞きして、既存の研究プロジェクトの中から選んでもかまいません。

大学の研究は、教育カリキュラムにも組み込まれていますが、通常の講義や実習とは全く違います。講義や実習では、知識の消費者の立場で学んできましたが、研究では、知識の生産者の視点から考えなければなりません。このため、(1)そのテーマの社会的意義を説明できることと、(2)新規性があることが実施するための必要条件です。(1)の社会的意義があるということは、研究の成果がどのようなもので、その成果はどのように役に立つまたはどのように面白いのかということを説明するストーリが作れるということです。また、(2)の新規性があるということを示すためには、少なくとも論文や特許を検索して、その方法や考え方が未発表であることを証明するか、既存の方法との違いを明確に示す必要があります。この2点が曖昧なまま研究を行っても、その結果が自分の研究成果だと主張することができませんし、将来的に事業化もできません。このため、MeRLでは、研究の開始時に、徹底的に文献と特許の検索を実施してもらいます。この経験は、就職後必ず役に立つはずです。

研究計画

研究テーマが決まったら、1年を通しての具体的な研究計画表を作成して、研究報告会で発表してもらいます。また、進学することが決まっている人は、大学院期間まで通して計画を作成してもかまいません。LSIを試作するような研究テーマを選んだ場合は、日程上、1年で研究を完結させることは困難なので、卒業研究は、途中経過報告という形となる場合が多いですが、研究室配属後すぐに研究テーマが決まるようであれば、年度内に試作・評価まで完了できる可能性もあります。研究計画表といっても、プロジェクト管理に使用するガントチャートのような簡単なもので十分です。できれば、必要な物品や機材と調達方法のリストまで作成しておくと、具体的に何をすべきか、実施可能かどうかが見えてきます。計画をそのまま実行できることは殆どありませんので、頻繁に修正や全面改訂が必要になりますが、計画を立てないと、何もしないまま、卒業または修了時期を迎える結果となるのが普通です。

研究室の行事

研究室に所属すると、研究活動に関する行事、親睦のための行事、健康のための行事など、いろいろな行事が待っています。ifDL(秋田研)は兄弟研究室であり、ゼミや行事を共同で行います。

  • 特許出願
    • MeRLの大きな特徴として、多くの学生が基本特許を出願していることがあげられます。情報・電子分野での出願頻度としては、国内ではトップクラスだと思います。研究上のアイデアがあれば、どんどん報告して下さい。教員だけではなく大学やTLO(技術移転機関)の知財専門家が、使えそうなアイデアかどうか判断し、弁理士さんの手配や出願手続きをサポートしてくれます。大学の研究から生まれた知財は、大学が権利を保有し、大学から発明者に報酬が支払われる形となるため、個人のものにはなりませんが、出願の経験は、就職後必ず役に立つはずです。
  • 学会発表/国際会議
    • 学会発表の目的は2つあります。(1)自分の研究成果が、他の研究者から見て、どのような位置づけにあるのか知ることと、(2)近い研究分野の研究者の考え方や最新の動向を知ることです。おまけとして、研究費で旅行を楽しむというのもあるかもしれません。普通の学会(全国大会や地方大会)は発表と質疑の時間が少ないため、十分なディスカッションができません。このため、多くの発表を聞いて見聞を広めることが主な目的になります。MeRLでは、一般的な学会よりも、十分な発表時間と質疑応答が与えられ、専門分野がある程度絞られている、研究会、国際会議、ワークショップといったイベントに参加することが多く、こうした場で、企業の研究者にスカウトされて就職した学生も多くいます。
  • 展示会
    • 研究成果を製品や事業に生かすためには、企業へのアピールが必要です。この目的では、展示会への出展が有効です。また、特許を出願すると、技術移転の促進のため、大学やTLO(技術移転機関)から展示会出展の要請がきます。展示会では、自分のブースを出し、ポスター、説明資料、可能ならばデモ機を展示し、ブースにやってきたお客様に説明を行うというもので、学会等に比べると準備のための労力は大きいのですが、世界中から多くのお客様が集まり、デモが受けたり/外したりして、かなり楽しい行事です。最近は、学会でも展示形式の発表会が増えています。
  • 論文発表
    • ある程度の量の研究成果がまとまり、体系的な議論ができる段階になったり、特に新しい発見や技術の提案を行った場合は、論文をまとめてもらいます。ここで言う論文は、卒業論文や修士論文とは違い、Google Scholar等で検索可能な国際的学術雑誌に掲載される論文のことで、掲載されるためには厳しい審査をパスする必要がありますが、掲載されれば歴史上に自分の名前を残すことができます(誤った研究結果が掲載されると汚名を残すことになりますが)。研究分野にも依りますが、原則として、論文は英語で書く必要があります。博士の学位を取るためには、必ず論文発表をする必要がありますが、MeRLでは、修士修了までに1編以上の論文発表を目標とします。
  • ゼミ合宿と新人研修
    • 研究室に配属された新しい学生の歓迎や先輩・教員との交流を兼ねて、5月に1泊2日のゼミ合宿を行っています。ここで、先輩の色々な(表)研究テーマの説明や、趣味を生かした裏研究テーマの紹介などを見ることができます。受けを狙った裏研究テーマから生まれた新技術は多く、裏研究テーマを持つことは、発想力を高める効果があるように思われます。また、MeRLでは、LSIの設計・試作、プリント基板製作、計測制御などを一通り体験してもらうための新人研修を行っています。
  • ゼミ
    • 所謂、勉強/討論会ですが、研究室として実施するものと、学生が自主的に行う輪講があります。研究室のゼミは、週1回当番を決めて論文を用いた講義を行ってもらいます。当番の人は、論文検索を行い、簡単なレジュメを作成し、論文の内容を要約して紹介します。このため、学術データベースを活用し論文を検索し、その中から有用なもの数編を抽出する作業が必要となります。この経験も、就職後必ず役に立つはずです。また、ゼミで集めた論文を整理しデータベース化しておけば、卒業論文や修士論文などの執筆が簡単にできます。
  • 東京大学VDEC
    • 設計したLSIは、主に東京大学VDEC(VLSI Design and Education Center)を窓口として、半導体メーカに試作してもらいます。直接、半導体メーカとの共同研究で試作を行う場合もありますが、特定メーカに依存しない事業化を目指すのであれば、VDEC等が提供する汎用的な製造サービスを利用するほうが有利です。この他、VDECのメーリングリストや、VDECではCAD講習会、デザイナーズフォーラム(若手の会)、リフレッシュセミナーなど多くの企画を通じて、全国の学生と楽しく交流することができます。
  • 共同研究ミーティング
    • MeRLの研究テーマの中には、企業や他大学との共同研究テーマが含まれています。共同研究テーマに参加する学生は、共同研究先とのミーティングに参加してもらいます。定期的な研究報告を行うためには、綿密な計画が必要です。期限のない研究テーマに比べると精神的負荷は大きいかもしれませんが、目標が明確であること、高いレベルの研究成果が達成できること、研究費が十分に使えること、お食事などに誘ってもらえることなど、多くの利点があります。共同研究に参加し、そのまま共同研究先の企業に就職した学生もいます。
  • 卒業研究発表会/修士論文発表会/学位論文公聴会
    • 学類は卒業研究発表会、博士前期課程は修士論文発表会、博士後期課程は学位論文公聴会で発表をしないと、卒業または修了が認められません。従って、ここでの発表は必須です。しかし、卒業研究発表会と修士論文発表会は、学類/専攻外に対して非公開の行事なので、社会的に認められる研究業績にはなりません。これは、形式的な通過儀礼と考えたほうが良いでしょう。一方、博士論文は国立国会図書館で所蔵され、公聴会も外部公開されており、研究業績として残るため、完成度が要求されます。
  • その他
    • 浅野川お花見、研究室対抗ソフトボール大会、バーベキュー大会、ボーリング大会、夏の研究室旅行、その他の打ち上げ飲み会など、多くの行事がありますが、企画力や行動力のある学生がいないと実施できません。是非、先輩のノウハウを盗んで、楽しい研究生活を演出してください。

研究設備

MeRLでは、LSIの製造はメーカに依頼するため、電気電子コースの研究室ような半導体製造設備は持っていません。その代わりに、回路基板製作、LSI設計、回路特性の測定に必要な機器はかなり充実しています。また、学生間の活発な討論が行われるような部屋配置などの配慮をしています。

  • 学生部屋とまったり部屋(2B7124, 2B716)
    • ifDLとの共有です。配属された学生は、学生部屋に机とPCを置き、普段はそこで研究を実施しています。半年に1回ぐらい席替えをします。まったり部屋(まったりコーナ)では、簡単な食事やプロジェクタ等を使った討論などができます。
  • はんだ部屋(2B736)
    • ifDLとの共用設備です。殆どの電子部品と工具が揃っており、回路のプリント基板実装がすぐにできます。
  • 測定部屋(2B734)
    • ifDLとの共用設備です。一般の回路特性の計測や高周波特性の計測を行うための計測器類、および計測器制御ソフトが揃っています。
  • VLSI評価試験室(VBL棟1階)
    • VDEC北陸支部の共有設備です。LSIテスター(LSIの性能評価)、収束イオンビーム装置(集積回路の配線の修正)などの大型設備が利用できます。
  • VDEC設計室(2階計算機実習室隣)
    • エミュレータ(8千万ゲートクラス)や業界標準のCADツール環境が、VDEC設計準備室の設備として用意されています。通常は、学生部屋からリモートで利用します。
  • 東京大学VDEC
    • 金沢大学にない設備については、東京大学VDECの設備を利用することができます。製造設備以外は、ほとんど何でも揃っています。


design.jpg
test.jpg
yk_chip.jpg