ここ数年、センサ関係のテーマにも力を入れていますが、センサと集積回路の開発がどう関係するの?という人も多いと思うので、少し解説しておきます。
センサというと、物理や化学的量を電気信号に変換するものだと考えている人が多いと思います。しかし、人間の五感または第六感などの感覚は、単なる物理的な刺激に対する反応ではなく、高次の情報処理メカニズムによって生成される空間モデルであり、生物に匹敵するセンサを実現するためには、システムのネットワーク化や情報の抽象化が本質的に重要なのです。現在のセンサ技術は、五感を超える人工感覚により仮想世界を生成する技術であると捉えることができます。
もう一つのセンサ研究の重要性は、人間が意識的には知覚できない巨大または微小、超低速まはた超高速、微量なものや電磁波などを、高精度アナログ-ディジタル変換技術とディジタル信号処理技術により抽出できることにあります。例えば細胞や分子のスケールで情報を取得するために、新しいセンサを開発する必要性が高まっています。現在のセンサ技術は、遺伝子レベルや細胞レベルで利用されている情報を目で見えるようにする技術であるともいえます。
上記のようなセンサは、集積回路技術を駆使することによって初めて実現されるため、最先端の集積回路設計技術を理解している研究者や技術者だけが参入できる領域なのです。集積回路技術により。画像取得、高精度信号処理や統計処理、多変量解析、学習などを高速に行うことが可能となり、人間が認識できないような、微小な温度変化や、微量化学物質、高速運動などを検出することで、環境、食品の安全性、健康の維持、医療、介護などに応用しようという動きが高まっており、この1年で集積回路技術はこれまでにない新しい局面を迎えようとしています。アイデア次第でシリコン集積回路の中にセンサを組み込んで新しい機能を生み出し、それを無線ネットワーク化することで、人間の五感を超えるシステムを作り出すことができる時代が到来しています。
(以下、秋田補足) このようなセンサ技術の一例が、高機能なカメラ向けのイメージセンサです